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読書を楽しむ「朱川湊人 あした咲く蕾」

CIMG4351.JPG                               昭和44年6月                                             大阪万博の前の年                                              大阪から母の妹の美知恵がやってきた                                         僕はこのとき小学2年生だった                                             美知恵おばさんの不思議な力を                                                 目の当たりにしたのは、数日後のことだった                                庭に枯れかけている朝顔の鉢があった。                                       それは僕が気まぐれで植えた朝顔だった。                                    おばさんに指示され僕は枯れている葉っぱを取った。                                       そして、朝顔の鉢の前に正座して、右手の親指と人差し指で根元近くの                                  蔓をつまんで大きく深呼吸すると、息を止めて目を閉じた。                                      枯れかけていた朝顔の蔓が緑に染まり、先端が生き物のように動き出し、                     新しい葉っぱがどんどん出てきた。                                    根元近くに淡い白に青のらせん状の縞の入った蕾ができた。                             おばさんは言った「これがあした咲く蕾や」。                                おばさんの不思議な才能ーそれは当時、僕と母しか知らない秘密だった。                     世の中には信じられないことをするひとがいるお話。


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