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読書を楽しむ「一色さゆり 光をえがく人」

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日本一熱い街にあるミャンマー料理店

住宅地にあるふつうの家の1階のリビングが店内だった

厨房では男性店主がひとりで調理をしている

梅雨の季節に工場で働く日本人やベトナム人の同僚と店を訪れた。馴染みのない国の料理なのに、日本風にアレンジされていてなつかしい味がした。それ以来、僕はその店に通うようになった。店内には檻に入れられ、頭部から樹木の生えた男の顔の絵が飾ってあった。店主とはじめて会話をしたのは酔っ払い客が店主ともめていた時に「警察呼びますよ」と言って追い払ってからだった。

僕は「あの絵は、誰が描いたんですか」と訊ねた。店主は「友人が監獄で描いた」と言った。そして、ミャンマーの話をはじめた。本当にミャンマーの歴史や現状を理解している人はいないと言い、理由は軍事政権に支配されていたため鎖国状態だった。その状況を打開するために学生の民主化運動が起きたが演説者が銃で撃たれ、参加した店主も武装兵士に連行され監獄に入れられた。そこにHと呼ばれる男がいて1本の巨木の前で穴を掘り白い枕を取り出し、枕の中から巻きスカートを出したら絵の具で絵が描かれていた。枕の中にはたくさんの絵が詰まっていた。絵は監獄で起きたことを記録するために描かれていて、いずれ作品を外の世界で発表すると言っていた。Hは監獄で絶望することなく自分の考えを絵にして現実を伝えることに専念していた。監獄の上空にも多くの星々が光を放っていた。

つらいとき、悲しいとき、アートがあるから浮かび上がる大切なもののお話。


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